〜成功する独立〜
第9話 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 |
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1.葛藤のマネジメント | ||
(1) あらすじ ?
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? プロポーズを断った籐子は、貫井に対する想いが少しずつ言動に表れ、木村も春菜もそれに気づく。木村の仕事はイトーヨーカ堂屋上のリニューアルは大成功。新しいクライアントの仕事も、クライアントは木村を指名し、仕事では絶好調である。一方、貫井は仕事がなく、暇を持て余す。ユニバーサル広告時代の後輩の中沢から、あなたの時代は終わったと挑発され、落ち込む。
? 貫井はひがみっぽくなり、吉武に絡む。そんな貫井を事務所のメンバーは気を使う。仕事が忙しい木村は自分の仕事である日の丸食品を貫井へ譲ろうとするが、貫井は怒る。そして、貫井は事務所を抜けると言い・・・
?a 自分より実力が下と見ていた木村が活躍するのを貫井はどう思っているのか?貫井の心理を考えてみよう。
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貫井は木村を可愛がっていたが、「あいつのデザインは俺の焼き直し」という発言を聞く限り、木村の実力を自分より下に見ている。木村も貫井を尊敬し、まだまだ自分の実力は貫井の足元に及ばないと思っているようである。しかし、木村には仕事がたくさん集まり、自分には仕事がない、という現状を見て、貫井の自信が揺らいでいた。中沢から「カモノハシ・ビールは貫井さんにNGを出し、木村を指名した。」と聞き、吉武からその事実を確認できたことで、貫井のプライドは傷つき、これまでの業績と名声で支えられていた自信は喪失した。そして、同僚である木村にクリエイターとしての競争心をもたげ、ある種の嫉妬も感じていたのではないか。 b 「あなたの名声はユニバーサルが作ったんですよ。それを勘違いし、独立なんかしちゃって。」という中沢の言葉をどう考えるか? 中沢の言葉はある意味で正しい。ユニバーサル広告の営業力で仕事を獲得し、その仕事を貫井に回し、貫井は育てられた。貫井がクリエイターとして頭角を現した後も、ユニバーサル広告という会社の信用にひかれ、ユニバーサル広告の中でもっとも有名な貫井を指名するということもあったであろう。それゆえ、貫井に実力があっても多かれ、少なかれ、会社の看板で仕事をしていた部分もあろう。 ?
c 木村の仕事を貫井に頼む、という木村の優しさに貫井はなぜ反発したのだろうか? ?
aのような状況で、木村が貫井へ日の丸食品の仕事を回そうとした。カモノハシ・ビールの仕事が押してきたから、という理由であっても、自信喪失と嫉妬という精神状態もあって、貫井は木村の配慮や会社としての仕事配分といった合理的理由も考えず、木村が優越感を持って自分に仕事を恵んだのではないかと考え、即時に反発した。同僚でありながらライバルである木村に対する潜在的葛藤、そして、社長として貫井が抑制してきた仕事が自分にないという知覚された葛藤が、木村が仕事を与えるという行動が感情的葛藤を引き起こし、一気に葛藤が表出したのではないかと考える。 d 貫井に対して「がっかりした」という籐子の言葉を貫井はどう思ったのか? ?
自分を尊敬してくれた人から、否定的な言葉を言われるのは辛いものである。好意を抱いている籐子の、真摯な言葉は誰の言葉よりも貫井の心に響いた。自分が周囲からどう思われて、期待されているのか。今までの自分の言動が周囲の期待をどれだけ裏切ってきたか。貫井は籐子の言葉で、クリエイター貫井功太郎として、社長として、自分が取るべき行動を考え直したのであろう。 e あなたが木村の立場だったら、貫井へどう対応しただろうか? ?
葛藤は貫井と木村の間の葛藤としてでなく、貫井企画全体の葛藤として建設的に解決する方法を探るべきであろう。そのため、木村個人だけで葛藤解決するのではなく、全員で葛藤解決を図るため、ミーティングをして、コミュニケーションを図るべきであろう。その話し合いの中で、葛藤を解決する基本方針を考える。相手の貫井は自己主張が強い状況である。そうなると、採用できる葛藤解決の戦略は協力か競争である。例えば、広小路製薬の仕事をしていたときのように、仕事が木村に集中している中でよりよい広告を作るため、2人で分業しながらの仕事を提案する。協力型の葛藤解決である。貫井の反発を抑えるため、社長としての役割、仕事の配分の視点から強力させる方法がよいであろう。また、リスクが高いものの、2人で日の丸食品の広告企画を社内コンペで決める競争型の葛藤解決がありえる。貫井の広告がよければ、自信も取り戻せるし、木村の案が選ばれたら貫井はいっそう自信を失うかもしれないが、社長としての役割を再認識し、やるべきことを見つけるであろう。最初は協力型を模索し、それでダメならショック療法のため、競争型に切り替える。ただし、こうした提案は木村が直接貫井へするのではなく、貫井も一目置き、職務上ライバル関係にない吉武が行う方がよい。 f 貫井は社長としてふさわしい資質を持っていると思うか? 少なくとも社員に気を使わせすぎる社長はダメ。社長が気を使い、社員へ動機付けをしながら働かせなくてはならない。経営者は冷静に経営判断しなければならないため、情緒は安定していたほうが良い。自信を喪失しても、それを社員の前で曝け出す事はしないほうが良い。貫井が籐子の前で酔って愚痴をこぼしていたが、恋人ならば良いが、部下へあのようなことを言っては部下が動揺するし、気を使わせることになるのでまずい。 ?
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2.葛藤とは | ||
??(1) 葛藤 b葛藤は合理的な意思決定をできない状況にする。両者の抱える問題から、両者にとっての最適な意思決定を妨げるのである。 (2) ビジネス上の葛藤が生じる次元 a同僚同士 吉武が入社した直後、木村が反発していた状況。 b上司と部下 上司は権限を行使し、部下がそれを受容しなくてはならず、しかし部下がその権限受容に納得がいかない場合、多くは生じる。このドラマでは、部下である吉武が会社存続のため、JPNリゾートの仕事をクライアントの意向どおりやって欲しいと上司である貫井へ頼むが、クリエイターとしてのプライドから貫井は反発していた状況。 c社内の部門間 縦割りが強い組織では、社内の部門が組織の下位目標を有し、その目標達成に他部門の利害を害してしまったり、他部門との協働や調整を拒むことがあり、それが部門間の葛藤を生じさせる。ドラマの中ではユニバーサル広告の営業部と制作部のクリエイター間に葛藤が生じているような発言が出ていた。貫井企画のような小さな会社では部門自体はない。 d非公式組織間、公式組織と非公式組織間 公式に組織化された組織以外に、公式な権限指揮系統と外れて生まれる自律的組織が非公式組織である。その非公式組織が公式組織と葛藤を生じさせたり、非公式組織間で葛藤を生じさせることもある。例えば、自民党の派閥という非公式組織が、自民党の挙党体制という方針に反して、政権に参加しないなどの例が挙げられる。また、森派と江藤・亀井派のような派閥間で抗争を行う例もある。 e組織間 JPNリゾートと貫井企画、ユニバーサル広告と貫井企画というような、組織間で利害の問題から葛藤が生じることもある。 (3) 葛藤のデメリットとメリット a最適な意思決定が不能になったり、協働が行えない。 b葛藤は破壊であり、そこから創造が生じる。葛藤を解決しようというプロセスが、変革を生み、新たな創造が生まれる。例えば、木村と吉武の葛藤は、結果として吉武の営業力を周知させることになり、営業と制作の分離という組織体制を生み出した。 |
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3.葛藤のダイナミック | ||
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?(1) 葛藤が生じる理由
a資源の希少性 希少な資源を統制下におこうとして利害が対立することから生じる。 b自律性と他者の支配欲 自らが自律的に活動したいため、それを干渉する他人や他組織と対立する。また、自らが他者や他組織へ影響を与えようとすると、反発され、葛藤が生じる。 c意図関心の分岐 共通の目標が合意されず、共有できないことから生じる対立がある。 (2) 葛藤発生のプロセス by Pondy (貫井企画の中の葛藤をPondyのモデルで分析) ・過去の葛藤が完全に解決されず、また、新たな環境からの圧力で葛藤の種を温存した状況にする。ユニバーサル広告から独立して以来、貫井の仕事が少なくなってきてるのに加え、木村への依頼の増加や中沢からなどのプレッシャーから潜在的葛藤が貫井企画の中で大きくなっていた。 ・貫井は籐子に心の中を打ち明け、籐子も貫井も貫井企画の中で貫井と木村の間に葛藤が存在することを知覚する。そして、木村が気を使い、貫井へ仕事を依頼したことから、貫井のなかでの感情的葛藤が限界点に達した。貫井が切れたことで、木村も感情的葛藤を覚えた。 ・貫井企画の中で貫井と木村の葛藤が表出化し、それを解決しようという動きが生まれる。まず、籐子が貫井を追って、説得を試みた。また、今後、貫井が社長としてとどまるのであれば、表出化した葛藤の解決に乗り出すであろう。葛藤が表出化したことで、吉武もいっそう営業で貫井のための仕事を獲得しようという配慮が働く。こうした結果、今回の葛藤は解決されるかもしれない。 (3) 葛藤の要因 aパーソナリティや価値観の個人差 個人の性格や価値観で葛藤を生みやすい人と、生みにくい人がある。対立を好まない人は、葛藤が深刻化する前に解決へ動くので葛藤が大きくならない。 b葛藤を生む性格=権威主義的+情緒不安定 権威を押し付け、相手に何かを強要したり、コミュニケーションにおいて情緒不安定であると葛藤を生みやすい。対立を問題としない考え方、他人へ優越性を誇示しようとする人や、その人がリーダーを務める組織は葛藤を生みやすい。 c低い人間関係形成能力 人間関係形勢能力が高いと、コミュニケーションが密接であれば、葛藤を生じさせにくくなる。 d相互依存的コミュニケーション 対面的なコミュニケーションを取っていると、相手の欠点を見てしまい、葛藤を生じさせやすくなる。 f未熟な組織内、組織間関係 組織の中では仕事の特性上、制度上、ゼロサムの形になり、利害が相反する形になっており、葛藤を生みやすくなる。葛藤を生じさせやすくなる。 (4) 官僚化と葛藤 |
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4.葛藤のマネジメント | ||
?(1) 葛藤を予防する
?a 組織学習
葛藤解決の経験が組織として学習し、どこに注意すれば葛藤が生じないかを学んでいれば、葛藤を生じさせないような組織行動が採られるであろう。 ?b 組織設計の工夫
葛藤の問題となる制度や組織構造を改革し、葛藤を防ぐ。例えば、営業部門と広告制作部門の協力関係ができるようなチーム制にする。 ?c 異端分子への対処
組織内で組織へ反発し、葛藤をもたらす人を、葛藤の解決へ生かす。 ?(2) 葛藤管理の方法
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(今回のドラマの葛藤解決法) ・競争型・・・貫井と木村が日の丸食品の広告案を社内コンペで競い合い、白黒決着をつける。 ・協力型・・・日の丸食品のTVCMは木村、ポスターは貫井というように分業し、協力し合う。 ・妥協型・・・貫井はクリエイターとして納得しないまま、日の丸食品の仕事を行う。 ・和解型・・・貫井が社長として自覚し、事務所の中の仕事配分という視点で木村の申し出を納得して受け入れる。 ・回避型・・・第10話で貫井が自ら楠木文具へ新製品開発戦略の提案をする。こうすることで、貫井は自分で木村たちとの葛藤を回避したことになる。そして、貫井は籐子と協働でこの仕事に取り組む。これは楠木文具担当の籐子の支援にもつながり、葛藤解決は協力型の解決へ移行していく。 |
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