(1) あらすじ
ユニバーサル広告時代の同僚だった吉武の妨害で、かってのクライアントは貫井から離れていった。一方、籐子は楠木文具を始めとする小さな仕事を手がけることを主張するが、貫井は一流クリエイターのプライドからか、聞く耳を持たない。
木村はコネで仕事を取ろうという魂胆で、ヒロコウジ製薬の宣伝部長の娘との合コンをセッティングするが、一本気の貫井は拒否する。しかし、木村が金沢から帰れず、籐子の説得で貫井が合コンへ出る。そこで、貫井はヒロウコウジ製薬の宣伝部長の娘である倉持春菜と仲良くなる。春菜は籐子の同居人であり、貫井は春菜と偶然再会する…
(2) ドラマのポイント
a なぜ、貫井は楠木文具の仕事をやろうとしないのか?
貫井は大手広告代理店で、大手企業と一緒にふんだんに資金を使って創造的な広告を製作してきたのだろう。そうした男が、10万円程度の求人広告という創造性があまり活かせない仕事をやりたいと思わないのであろう。
b 吉武が貫井たちを邪魔する理由をどう考えるか?
「我々は我々の利益を守る。同じ目的を共有しているから信頼できた。やりたいことだけやって生きていくなんて、この社会では許されない。」by吉武
組織人としての吉武は、ユニバーサル広告とライバル関係になりそうな貫井企画の商売の邪魔をして、自社の売上を取られないようにするという考えから貫井企画の邪魔をしている。個人としての吉武は、組織人として会社から様々な制約を受けながら働いているので、独立して自分の好きな仕事を自由にしようとしている貫井にある種の嫉妬を感じているのであろう。
c なぜ、貫井は籐子の説得を聞き入れ、合コンへ出席したのか?
「楽な方を選んでいるのはお互い様。貫井さんは前の会社のコネで仕事をしようとしている。」by籐子
籐子も木村も事務所のために懸命に営業をしているのに対して、経営者として新規顧客を開拓して、小さな仕事でも取ってくるということをしない、貫井の経営者としての問題点を籐子から指摘され、自分でも納得したから。
d 経営者として貫井の態度や考え方をどう思うか?
「俺にあいつらの前で媚びへつらえって言うのか?」by貫井(サントリオンの新ワイン発表会へ出席して欲しいと言われ)
広告制作会社とはいえ、経営者としての仕事は広告の企画と製作だけではない。社長による営業は非常に重要な仕事である。ユニバーサル広告時代の人脈以外へは、貫井は営業をしていない。小さな会社なんだから、生き残りのために必死に営業し、仕事を取ってくる積極性が必要。可能性があれば、どんどん営業へ行くべきであろう。小さな仕事でも、仕事をやらず売上がないよりはましである。貫井も事務所でぼーっとしている時間があったら、戦略を考え、行動しなくてはならない。また、社員の使い方も、籐子に対する態度をみているとあまりうまいとはいえない。
e なぜ、貫井企画の開業が予想通りに進まなかったのか、その理由と対策は?
まず、突発的に会社を辞め、事前の計画や準備がないまま独立したことが最大の問題。会社を円満退社をし、独立した後の売上確保を考え、取引先への根回しは必要。また、ユニバーサル広告の妨害に会う、という障害も予想し、それへの対策も想定していなかった。ユニバーサル広告との競争に打ち勝つ戦術、例えば、事業分野を絞り込む、ユニバーサル広告が手がけていない顧客への営業を行う、独自性を打ち出す、価値(価格と効果のバランス)で競争する、などを、事前に考えておく。さらに、事務所の経営、すなわち、スタッフの採用や資金繰りの問題も、事前に手を打っておくべきであろう。
f あなたが貫井だったら、この時点で貫井企画の経営をどうするか?
開業から3年くらいは経営が安定せず、赤字に甘んじることは多い。その間、耐えられるかどうかが大切。貫井企画の資本金はあまり多くないようなので、事務所の経費削減、小さな仕事でもなるべく多く手がけて売上を増やすことをやらなくてはいけない。
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