〜地域を変えるコミュニティビジネス〜


第2話          10 11
1.仕事と働きがい

(1) あらすじ

病で倒れていた兄が持病の狭心症で急逝する。龍錦で日本一の酒を造る夢を追い求めていた康男が亡くなったことで、新しい酒造りはとん挫する。夏子は「金寿」の第二弾広告のコピーを任され、長谷酒造へ見学に行くが、自動化された工場、美味しくない味に違和感を持つ。そのため、正直な夏子は「金寿」を褒め称えるコピーを書けなくなってしまう。上司の原田に「広告を愛すればよい、商品は愛さなくてもよい。」と諭されるが、納得がいかない。荒木と話をしているうちに、夏子は兄の言っていた七色に輝く酒を造ってみたい気持ちになり、会社を辞めて兄の夢を継承することに決めた。

(2) ドラマのポイント

a. 兄康男は自分の命を賭けてまで追い求めた夢とは何だったのか?

やる気のある造り酒屋の経営者にとって、日本一の酒を造るというのは悲願なのであろう。ただ、同じ酒米と同じ酵母を使えば、似たような味になってしまい、他の酒に対して圧倒的に美味しい酒を造るのは困難である。そこで、酒米としては山田錦(酒米としてもっとも適していると言われている)以上に美味しい酒が造れる可能性がある龍錦に、康男は日本一の酒造りの夢を賭けたのであろう。

b. なぜ冴子は夏子に対していじわるな態度を取るのか?

夏子が東京で活躍し、家庭的に恵まれ、お嬢さんとしてちやほやされ、そして、賭けるべき夢を持って生き生きとしているので、それらを持たない冴子は嫉妬している。嫉妬が夏子への態度を意地悪なものにしている。

c. 石ころをダイヤモンドのように売る広告とは何だろうか?

価値のない製品やサービスを、美しい言葉で飾って、あたかも価値のあるものとしてイメージ付ける広告。

d. なぜ、夏子は広告と割り切ってコピーを書けないのか?

夏子はカメラ屋のちらし広告のコピーを書いているときは、コピーライトを仕事と割り切ってやっていたと思われる。しかしながら、日本酒の広告に関しては、彼女は特別な思い入れがあって広告のコピーを書いたのであろう。そもそも「美酒、なないろに輝いて」というコピーは、兄の言葉から生まれ、兄の目指した酒を念頭に書いたものである。ところが金寿の生産工程を見学し、初めて飲んだ金寿が「なないろに輝く」酒ではないことに気がついた。その言葉にはほど遠い金寿に「なないろに輝いて」という表現を使ったことに対する自責の念もあったとも考えられる。造り酒屋で生まれ育ち、日本酒の味や日本酒造りに対して彼女なりの価値尺度を持っているため、彼女の価値尺度から低い評価しかできない日本酒に対して、自分の気持ちに逆らって広告のコピーをかけなくなってしまったのであろう。しかしながら、彼女は最終的に「お米の酒が飲みたい」という金寿のコピーを書いて、それが承認された。彼女はコピーライターとしての最後の仕事と決心し、彼女自身の気持ちを偽らず、広告として十分の役割を果たせることのできるコピーをプロとして、自分を育ててくれた原田のために書き上げた。

e. なぜ、夏子は会社を辞め、兄の夢を継承する気持ちになったのか?

尊敬し、愛する兄の夢に、夏子も共感し、価値を感じている。その兄が死に、夢が途切れる無念さと相まって、自分の仕事にも疑問を感じたことから兄の夢を継いで、龍錦による日本一の酒を造る気になった。

f. なぜ、草壁は夏子の金寿のコピーに対して怒ったのか?

価値の低い酒をあたかも価値のあるように売り込む広告を、よりによって尊敬する専務の康男の妹が書いたことに対して、自分たちの神聖な酒造りが冒涜されたような気持ちになり、草壁は怒っている。

g. 夏子から辞めると言われた原田はどんな気持ちだっただろうか?

自分が育てた部下が、相談もなしにいきなり辞めるのは上司としては辛く、怒りたくなる気持ちもわかる。ただ、夏子が新しい夢を見つけて、それに賭けようとしているので、応援したい気持ちもある。

2.広告の役割と意味

(1) 広告の意味

a. 多くの人に価値ある製品やサービスの存在を社会へ知らせる

ただし、広告は費用がかかるため、「月の露」のような広告費を用意できない中小企業は良い製品を社会へ知らせることができない。その結果、消費者が情報不足ゆえに、本当によい商品は埋もれて、大したことのない商品が広告で知られているということもある。

b. 大量に販売を可能にすることで単位当たりの費用を低下させる

広告の費用がかかっても、それ以上の売上が可能になれば、広告費は回収できる。また、生産規模の拡大によって生じる規模の経済により、生産コストが低下することで収益性を高められる。もしくは低価格化を可能にする。

(2) 広告の目的

a. 広告主が知らせたいものを消費者へ知らせる…新製品の発売、仕様、価格、品質、イメージ等

b. 広告主が消費者を説得する…商品やサービスの効用(利用することで消費者がメリットを受ける内容)を伝え、商品やサービスの購入を説得する

c. 広告主が消費者に広告主の提供する商品やサービスを思い出させる…ネーミング、デザイン、イメージソング、キャラクター等

(3) クリエイティブ戦略

a. 伝えるべき商品やサービスの属性を選び出して絞り込む(高品質、低価格、デザインの良さ等)

広告主である企業の経営戦略、製品コンセプトと整合性のある広告を制作する。

b. 伝えたいメッセージを伝わりやすいメッセージ(コピー)へ翻訳する…コピーライターの重要な仕事で、シンプルで、かつインパクトのあるコピーが必要。

(4) メディア戦略

a. 商品やサービスを売りたいターゲット顧客、地域、市場規模に合わせてメディア(媒体)を選択し、広告していく。

b. 予算の制約

c. TV広告・・・市場規模がある程度あり、幅広い顧客ターゲットの製品・サービスに向く。また、言葉で細かく説明しにくいため、ビジュアルで理解させられるような、動態的な製品・サービスに向く。予算がかかるため、売上の規模がある程度ないと、広告費を回収できない。

d. 新聞広告・・・中高年向けの製品・サービスで、地域を限定できる。文章で説明できるメリットもあるが、広告自体が静態的ゆえにそれに合った製品・サービスに向く。

e. ちらし広告・・・費用が比較的少なくてすみ、地域をかなり限定できる。

f. ネット広告・・・費用が比較的少なくてもすみ、迅速に広告を行える。しかし、クリック率が落ちてきており、その効率が疑問視されてきている。

g. ラジオ広告・・・耳から印象づける広告で、ビジュアルがないため、製品名や特徴を中心に訴える広告になる。

3.仕事と働きがい

(1) やりたい仕事とやれる仕事

やりたい仕事があっても、かならずしも会社の中でやらせてもらえない。また、その仕事を任せられたとしても、能力がなければできない。

(2) やりたい仕事をゲットする方法

a. 仕事に必要とされる能力を把握する

b. 自分の能力の現状を把握する

c. aとbのギャップを分析する

d. cで分析されたギャップを解消する方法を考え、実行する

e. 上司や同僚に自分のやりたい仕事と自分の能力をアピールする

(3) 働きがい

a. 快適な業務環境

b. 仕事で認められる

c. 仕事が自己実現や自己の成長に結びつく

(4) 労働者からプロフェッショナルへ
与えられた仕事のみをこなすのではなく、自ら仕事を創造し、より困難な仕事に挑戦し、確実に達成していくプロフェッショナルが求められている。

4.コミュニティビジネスと働きがい
(1) 企業に働きがいを求められる時代か?

a 企業の中では利益を目標に活動していかなくてはならないが、利益を得る活動に関心を持てない人には働きがいを求めにくい。

b 不景気で企業が社員にとって居心地の良い場所ではなくなってきている。過度の競争や業績へのプレッシャー。自分を殺して企業という組織の中で働くことに息苦しさを感じている人が増えている。

c 高度成長期の日本人の価値観、一生懸命働き豊かになる、という価値観が多様化し、企業の外に働きがいを見出す人も増えている。

(2) 個人が大切にされるコミュニティビジネス

a ビジネス活動が地域社会へ貢献するため、そうした価値観を大切にする人にとっては自己実現という働きがいを得られる。

b NPOによるコミュニティビジネスの場合、NPOが民主的な運営がなされるため、参加意欲が満たされる。

c ビジネス自体が個人志向で動けるので、やりがいはある。

d ただし、コミュニティビジネスが低収益になる傾向にあるため、働く人の賃金が安い傾向にある。

(3) コミュニティビジネスで働きがいや生きがいを見つけられる人

a 経済的豊かさよりも精神的豊かさを大切にする人

b 地域へ貢献したい気持ちが強い人

c 官僚組織では働きたくない人