〜スモール・ビジネスの経営〜

PART3   
1.内容

(1) あらすじ

安宅物産の仕事を取られたバイク便会社の陰謀によって、TOKYO EXPRESSと安宅物産の岡野の間でトラブルになる。それが原因で、再びバイク便とTOKYO EXPRESSの間で配達のレースをさせられることになった。
いよいよ配達のレースの日、ライバルのバイク便は汚い手を使ってまでも小さなTOKYO EXPRESSを潰そうとする。かっての仲間がバイク便と苦しみながら戦っているのを見た直美は、Tim Grayとの大事な契約があるにもかかわらず、その場を離れ、再び仲間のために戦うことにする。

(2) ドラマのポイント

a 岡野に対して鈴木の取った態度は、社長として適切であったか?

「短気は損気」という言葉があるとおり、切れたら自分が損することが多い。しかも、会社を代表している鈴木が顧客相手に切れれば、会社のビジネスへマイナスになることくらい、社長として理解できていないといけない。だから、直美に素人と言われてしまう。

b 直美はなぜ、PRESSの仕事を捨て、みんなの元へ戻ってきたのか?

大切な仲間が苦しんでいるので、いてもたってもいられなかった。特に好意を持つ鈴木のために、自分も戦いたかったのであろう。

c 直美は鈴木に「なんで帰ってきたんだよ!」と怒鳴られ、なんと答えていたのだろうか?

「あなたが××!」まあ、書くだけ野暮だな。

d TOKYO EXPRESSの成功理由は?

事業領域の選択に関しては、ビジネスの中心地で、書類等を迅速に配達する市場が十分あり、TOKYO EXPRESSに競争力があればある程度顧客を確保でき、売上はあがるであろう。また、鈴木の趣味である自転車と、自転車便への情熱が、バイク便に対する大きな優位性になったかもしれない。ただ、情熱が強い反面、思いこみが激しく、冷静な目で経営を見られなかった。しかし、直美という営業センスのあるパートナーを得て、鈴木の情熱をうまく利益に結びつけられた。TOKYO EXPRESSは小さな会社なので、経営者と働くメンバーの垣根も低く、チームワークも非常によい。チームワークの良さは効率的な配達をもたらしてくれる。経営戦略としては、安宅物産のような書類の配達という仕事がたくさん発生する会社へターゲットを当てたのは、正解である。また、バイク便より安い料金で、速く運べるという、吉野屋のような差別化を実現できたことが競争優位をもたらした。

2.スモールビジネスの起業の特徴
(1) 経営資源の乏しさ→弱点を補うことや逆にそれを活かせ!

(2) 金がない

a 初期の設備投資を抑える→中古品の活用

b 現金商売→日銭を稼いで資金繰りを楽にする。また、手形を使う手間やリスクを負わない。

c 仕入コストを下げる→こまめに安い仕入先を探す

d 自分の夢のために無給で働け!

(3)モノがない

a モノ(設備)がいらないビジネス・モデルを考える

b リースやレンタルの活用

(4)人がいない

a ネットワークの活用

b アウトソーシングによる取引業者を活用する

c 自分の夢のために無休で働け
3.スモールビジネスの競争戦略

(1)ニッチ(隙間)市場を確保する

a ライバルがいないような小さなニッチ市場を発見し、獲得する。

b 新規参入を防いで、ニッチ市場を独占し続ける。

(2) スモールビジネスの優位性を活かす

a スピーディーな意思決定と行動

b 柔軟性

(3) スモールビジネスの劣位性

a 信用がない

b 商品数の少なさ

c 規模の経済性が期待できない分、コストが高くなりやすい。

(4) スモールビジネスらしい戦い方

a 選択:経営資源が十分でないため、市場やターゲット顧客を絞り込んで、戦いやすくする。

b 集中:競争力を高めるために、ある市場や業務へ徹底的に経営資源を集中する。

c ゲリラ戦:大企業にはない柔軟性や機動性を武器にする。

4.価格競争か差別化か
(1) 価格競争で戦う

a 低価格はリスクが低い

安ければ買う人は、高価格でも買ってくれる人より確実に多い。高価格を実現するための付加価値は、顧客によって異なるため、なかなか付加価値を価格の転嫁しにくい。

b 低価格を実現できる低コスト集中優位を構築

TOKYO EXPRESSは顧客を安宅物産に絞り込む(集中)ことで、荷物の発送先を特定化し、低コストを実現できる。また、配達に自転車を使用することで、コストが低く押さえられる。

c 薄利多売できる営業力、販売力

低価格で利益を生み出すのは難しいので、大量販売で利益の絶対額を高めていく。

d 低価格のブランドイメージのメリットとデメリット

ユニクロのように「安い」というイメージが確立できれば、安い商品を求める人はまずユニクロへ行くであろう。しかし、会社が高付加価値の商品を提供しようと思っても、かっての日本車のように安い自動車というイメージが強すぎて高級車が売れないということになる。

(2) 低価格競争を避ける

a 確固たる差別化の武器がある→高価格戦略

b 低コスト優位性がなければ単なる薄利

c 価格アップの難しさ

(3) 価格競争に巻き込まれたら

a 低コスト優位に自信があれば反撃

b正面対決を避け、攻撃をかわす

c 市場を放棄する

(4) 差別化のメリットとデメリット

a 差別化に成功するとプレミアム高価格が可能

b 差別化=独自性ゆえにライバルが反撃しにくい

c ブランド構築がしやすい

d 差別化はコストが高くなる(デメリット)

e 競争が激しかったり、顧客の価格志向が強いと、差別化しても価格へ転嫁できないリスクは高い(デメリット)

(5) 差別化優位を構築できる条件

a 顧客にとって価値ある差別化が可能かどうか?

価値ある差別化ができないような商品をコモディティと呼ぶ。代表的な商品はガソリン。そうした商品では競争の武器は価格を中心とせざるを得ない。

b 差別化優位の武器を自社が持っているか?

c ライバルが容易に追従できない持続的競争優位構築は可能か?

(6) 差別化戦略のポイント

a 差別化のポイントを絞れ

すべてにおいて差別化しようとするとコストが高くなりすぎてしまう。顧客が感じる価値の源泉を探り、そのポイントで徹底した差別化を図るのが効率的である。

b 差別化で上昇するコストを顧客へ提供する価値とは関連性の薄い分野で抑制せよ。

例えば、日本車における差別化は、顧客の目に見え、手で触れるところにお金をかけて差別化するが、それ以外のところでコストダウンを図る。
5.スモールビジネスの成功要因
(1) 社長の資質

a 思考力→創造力+構想力+分析力

b リーダーシップ

c 情熱

d 気力

e 実行力

f 運

(2) 意思決定

a 迅速な意思決定→不完全でもいいからとにかく決めろ。迅速な意思決定ができない、スモールビジネスは潰れてしまう。

b 朝令暮改は当たり前→自分の以前の命令に対する面子などを気にせず、正しくない命令をあらため、正しいと思った命令を常にする。自分の面目を保つために誤った命令をそのままにしておくことは、大きな失敗につながるリスクを高めるだけ。

c 常識ある反常識→常識ある経営をしていたら、大企業に勝てる差別化など生まれない。業界の常識を反対に考えることで、独創性が生まれることも多い。

(3) 実行

a 社長自ら先陣を切って実行→経営者はプレイングマネジャーじゃないと、スモールビジネスは成功しない。

b 社長の手足になる忠実な実行部隊を持て!