現状ではボランティア希望者が多く、高齢者からの依頼が少なく、マッチングできないのも課題である。結果としてやる気のあったボランティアも、ボランティアの仕事が回ってこないのでモチベーションが下がってしまう。利用者33名ではボランティアの適正数は現状の利用率であれば50名程度で大丈夫である。結果として登録ボランティア104名が生かし切れていないようである。しかし、一方でサービス利用の依頼が高齢者から出されてきたときに、それを引き受けられるボランティアがいないこともあった。こうした需給のマッチング問題も解決しなければ、利用者の満足度を維持できない。そこで、サービス利用の高齢者に対して、ホームサービスの依頼は、ボランティア登録が多い土日にしてほしいと高齢者へ頼んでいる。また、サービス利用者は冬が多く、夏は少ないという季節変動も解決すべき課題である。また、Lモードをツールに使用しているが、使いこなせない利用者がいるのも事実である。また、利用者を増やそうとすると、Lモードの操作性が利用者拡大へのハードルになる懸念もある。ITによる効率性や利便性と、利用の容易さを両立するためのいっそうの工夫が必要であろう。
この制度に関わる経済的な課題は多くある。高齢者がこのシステムによるサービスを受けようとすると、毎月1,000円のサービス料を支払う必要がある。また、このサービスを利用するための通信料は月280円程度である。年金暮らしの高齢者にとって、少額の負担でも嫌う人がおり、こちらから働きかけないと利用者は増えてこなかった。現在、サービス料の1,000円はシナジー社へのサーバーとソフト使用料に補填されている。シナジー社への支払いは、コスト計算に基づく料金を試算すれば、月60万円程度になってもおかしくないくらいコストがかかっているとのことである。これも現段階では実験ということもあり、シナジー社へはこの程度の使用料の支払いですんでいるが、こうした料金システムも今年度で終了する。その後の費用負担増加に関して社会福祉協議会では負担できないので、事業継続の見込みはたっていない。とりあえず利用者を100名に増やし、サービス料収入を10万円にし、シナジー社へ支払える金額を増やしたい意向を持っている。事業スタート時にはNTT東日本からLモード付き電話機50台を借りていたが、平成16年の3月にはこれらの機器を富良野市社会福祉協議会が買い取る予定である。そうした予算の手当ても必要である。
高齢者にとっても、ボランティア希望者にとっても、今のITを使ったシステムはとても良くできているが、高コストが最大の課題。もっと低コストのシステムへ変更する、周辺市町村と組んで利用者を増加させ損益分岐点をクリアする、企業へ顧客紹介やボランティアだけでなくビジネス利用の解放などのメリットを与えて資金を提供する事業モデルの変革などの戦略修正が、経済的課題の解決には必要と考える。また、ボランティアを受ける側とする側のニーズを探り、ニーズマッチングをする必要があろう。様々なサービスを有料でも受けたいという高齢者もいると考えられ、見守りネットというプラットフォームを活かすためにも、互助という理念を崩さない程度に有償ボランティアサービスのメニュー開発も行っても良い。
システムの運営費を捻出するためにビジネスを伴ったサービス提供を行う場合、社会福祉事業法で制約された社会福祉協議会という組織がビジネス的要素を持った事業モデルの経営を行うことに対して、問題が生じる懸念もある。また、社会福祉協議会が行える事業は、社会福祉という分野に限定される。見守りネットのプラットフォームは福祉だけでなく、より広範な公共サービス提供や、場合によってはeビジネスのプラットフォームに活用できる。地域課題の解決に関する見守りネットの潜在能力を考えれば、公益と私益、非営利と営利を両立できるNPO法人などへ運営組織を変える選択もあろう。
(2003年7月調査)
|