File NO.005 北海道エアフロント開発
1.第三セクター設立の経緯
@ 北海道エアフロント開発設立
 北海道は日本の政治や経済の機能が集まり、人口の多くを抱える本州から離れた島である。そのため、本州からのアクセスは、青函トンネルができるまでは海路と空路であった。海路は主に物の移動で、空路は人の移動が中心になっている。北海道中央部の空港として、札幌市内に丘珠空港があったが、市内にあることから騒音問題や規模の小ささからより大規模な空港が必要とされるようになった。そこで、米軍が使用し、1959年に日本へ返還された千歳を民間航空専用地域として拡大することになった。1962年に民間空港としてターミナルビルの建設と経営を行う第三セクター北海道空港株式会社が設立され、空港ターミナルビルは翌年に開業した。日本の経済の発展とともに、千歳空港に発着する民間航空機の数が増加し、また、国際空港として本格的に利用する計画が持ち上がると、千歳空港の規模では手狭になった。そこで、千歳空港を拡張、整備し新千歳空港建設整備基本計画が1986年に告示され、1988年に開港した。空港の拡張整備に合わせて北海道空港は新千歳空港ターミナル建設本部を1987年に設置し、1992年に新千歳空港旅客ターミナルをオープンした。
 1992年5月に千歳空港旅客ターミナルの機能やテナントが新千歳空港旅客ターミナルへ移転したが、11月に東京航空局から旧旅客ターミナルの有効活用に関する通達が来る。北海道は北海道空港が所有する(土地は国有地)旧旅客ターミナルの有効な再利用策の検討を開始した。その当時、多額の対日貿易赤字に悩む米国からの圧力によって生まれた、通産省、運輸省、農林水産省、自治省が推進する輸入促進地域計画であるFAZ(Foreign Access Zone)構想が進行しており、通産省から北海道へFAZ 構想に関する働きかけがあったようである。旧旅客ターミナル利用をFAZ 構想にうまく乗せられれば、国の産業基盤整備基金から事業主体に対する出資や施設整備への補助金、FAZ に関わる輸入業者への低利融資などの支援を受けられる。こうした事情を踏まえ、北海道はFAZ事業の一環として旧旅客ターミナルの再利用をしていくことになった。事業主体が産業整備基金からの出資と国の補助金を受け入れることから、FAZ事業として採択されるには第三セクターによる事業が前提になる。FAZで第三セクターが担うのは輸入品の保管と集荷施設、輸入品の展示販売施設、情報センター、加工業務施設などの施設の建設と管理になると考えられる。既に事業を行っている北海道空港と札幌国際エアカーゴターミナルといった第三セクターと事業目的や領域が異なる。加えて通産省の推進するオフィス・アルカディア計画を利用して新千歳空港周辺を総合的に開発する事業体が必要となるため、新たな第三セクターの設立が考えられた。
 1993年7月、北海道を中心として、北海道経済連合会、日商岩井、千歳市、苫小牧市、北海道商工会議所連絡会、三井物産、北海道電力、北海道ガス、北海道拓殖銀行、日本興業銀行、日本通運、伊藤組土建、地崎工業、清水建設、大成建設、日立製作所、大同ほくさん、東京急行電鉄、NTT データ通信が新千歳空港周辺地域の開発を推進する事業体の設立準備会が発足した。事業内容は、北海道空港から旧旅客ターミナルの管理運営受託し、ブースやレンタルオフィスを貸し出しテナントからの収入を得る。また、情報センターを設置し、輸入に関わるビジネスを支援していく。1994年3月、新千歳空港周辺のFAZ 構想が正式に指定され、4月にFAZ の事業主体となる第三セクター、北海道エアフロント開発が設立される。設立時の資本金は4億9,900万円で、北海道が1億3,000万円、国が産業基盤整備基金を通じて9,900万円、千歳市と苫小牧市が3,500万円、北海道電力、北海道拓殖銀行、日商岩井、三井物産、地崎工業の5社が1,000万円、残りを経済団体や民間企業の68団体が出資した。代表取締役社長には、筆頭株主である北海道から堀達也北海道副知事(当時)が送り込まれ、実務は北海道電力から出向してきた川口博正専務取締役が取り仕切ることになった。北海道エアフロント開発の定款では、a 地域開発事業の企画立案と企業誘致、b 輸入貨物の加工、展示、販売に供する施設の設置と運営、c 不動産の管理と仲介、d 貿易コンサルティングとなっており、旧旅客ターミナルの運営だけでなく、広い事業領域が計画されていた。北海道エアフロント開発はまず、4階建て総床面積20,000平方メートルの旧千歳空港旅客ターミナルの改装を行い、1階部分は北海道と千歳市が1億2,000万円で借り上げる多目的ホールとレンタカー店を備え、2階以上には輸入品ショップや貿易商社など50程度のテナントを誘致して8月に開業する予定であった。

A 千歳NEWSオープン
 旧千歳空港旅客ターミナルは8月に開業する予定であったが、広告代理店を通じて行った輸入商品販売店部分のテナント誘致が遅れてしまった。テナント誘致が難航した理由は、バブル経済崩壊の影響と立地面から採算性に問題ありと小売店などが判断したからのようである。 約半年遅れたものの1995年3月に旧旅客ターミナルは輸入促進商業施設「千歳ワールド・マーケット・プレイス 千歳NEWS」(以下千歳NEWS )としてオープンした。開業に当たっての改修費用は14億円で、1階は多目的ホールや公共スペース、レンタカー店などが設置される多目的スペース、2階以上には衣料品、アウトドア用品、輸入雑貨店、飲食店など14店、輸入促進ビジネスプラザなどがテナントとして入店した。しかしながら、テナント誘致活動時に指摘されていた集客の問題が、1年もたたないうちに千歳NEWS に生じた。オープン当初は目新しさもあり月間8万人程度の来場者があったものの、開業1年もたたないうちに来場者は3万人程度に減少した。そのため、テナントの売上高によって決まる賃貸収入を主とする北海道エアフロント開発の1995年度の売上高は、テナントの売り上げ不振から約1億7,400万円という状況であった。そして、テナント7店が早々と千歳NEWS からの撤退を決めた。一方で、北海道空港への施設賃借料は固定料金で、人件費などの固定費も圧縮できず、営業開始初年度は3億2,700万円の赤字であった。
 こうした惨状に対して、北海道エアフロント開発は千歳NEWS てこ入れのために、1996年2月に商業施設部分の床面積を2.2倍の6,500平方メートルにする増床工事を開始した。1階の多目的スペースを改装して、輸入衣料雑貨販売の大手ブルーハウスを始め10店が新たに出店することになっていた。千歳NEWS オープン時の14億円の改装費は補助金や公的な低利融資でまかなったものの、キャッシュ流入不足から資本金は運転資金として使われ、北海道エアフロント開発は本格的に事業開始後1年で財務上危機状態に陥ってしまった。そこで筆頭株主で、林副知事を代表取締役社長として送り込んでいる北海道は1996年度の予算に北海道エアフロント開発へ3億3,400万円の赤字補填の補助金を、そしてその後9年間で同社の赤字に見合う約13億円の補助金を支出することに決めた。千歳NEWS は中央官庁の推進するFAZ 構想の第一段階で、ここで躓くと輸入生鮮食品加工施設を苫小牧市に建設する第二段階、空輸のための物流センターを整備する第三段階に悪影響があるため、北海道議会から批判されても10年間で16億円の補助金支出をせざるを得なかった。また、北海道エアフロント開発は、千歳NEWS の施設を所有する北海道空港へ施設賃借料を引き下げる要請を行った。
 5月に千歳NEWS 1階の改装が終わり、ブルーハウスが中心となった道央輸入品促進協同組合が経営するアウトドア・スポーツ用品店「ワイルドバランス」などが開店したことで、来場者が2割以上増加し、千歳NEWS に活気が戻ってきた。また、空きスペースの多い4階のレンタルオフィスを外資系企業には無料、国内の輸入業者には半額の賃借料で貸し出すことにして、国際的なビジネス拠点にする戦略を開始した。千歳NEWS の不振や事業環境の変化からFAZ 構想自体も、苫小牧市ウトナイ地区に計画している生鮮食品の流通加工施設を輸入住宅関連へ、輸入ルートも新千歳空港の空路から苫小牧港の海路へと大幅に見直された。こうしたFAZ 構想の見直しは、相対的な千歳NEWS の重要性を低下させることになった。
2.経営破綻と処理

1997年1月、以前から経営不振が噂されていたブルーハウスが札幌地方裁判所から破産宣告を受けた。ブルーハウスは千歳NEWS の中核店となったワイルドバランスを経営する輸入業者組合の中心的メンバーであり、ブルーハウスの倒産によってワイルドバランスは営業休止せざるを得なくなってしまった。集客力に大きな影響を与えていたワイルドバランスの営業休止は、千歳NEWS の集客にマイナスになり、他のテナントの撤退を招くことになりかねないため、千歳NEWS の経営へ重大な打撃が懸念された。その後ワイルドバランスは3月にブルーハウスとその連鎖倒産した業者を除く5社で、2割から7割オフの在庫処分セールによって営業を再開した。ワイルドバランスの一時的営業休止があったものの、1996年度通期ではリニューアルと店舗レイアウトの変更の効果で北海道エアフロント開発の業績は改善し、売上高は2億3,400万円、経常損益は2億8,200万円になった。また、同社がテナントから得る収入に対して北海道空港へ支払う賃借料が多い、逆ざやの赤字を生じさせている。その赤字に対して北海道が差額賃料補助という名目で支出する補助金3億3,400万円を同社は特別利益に計上したため、当期損失は1,477万円までに縮小された。負債は1階部分のリニューアルの費用が加わって15億円になっていた。
 北海道からの補助金によって持ち直しているものの、テナント撤退やワイルドバランスの家賃滞納など経営上の問題が続く千歳NEWS に対して、北海道はワーキンググループで検討してきたが、商業部門の営業は継続すべきであるが現在のビルでの営業は困難、という結論に達した。その分析を基にして、8店舗と3社のオフィスが事業を続ける商業部門を現在の施設から新千歳空港ターミナルビルなど他の施設へ移転させ存続させることを、堀北海道知事ら北海道幹部による政策会議の場で確認した。一方で、1997年度も北海道は北海道エアフロント開発へ差額賃料補助の名目で経済的支援を行うことに決定した。この時までに北海道がFAZへ支援した予算は年間1億円の多目的ホール使用料を含み、約12億円にまでのぼっていた。1998年3月、千歳NEWS の商業部門はついに閉鎖される。同年12月にビルの所有者である北海道空港は、千歳NEWS の撤退によって国に支払う土地使用料と建物維持費約4億円の支出に見合う収入がなくなるため、旧旅客ターミナル解体を決定する。
 1999年1月、北海道は「時のアセスメント」により事業が進まず、収益性も不透明なFAZ 計画自体を中止することに決定したため、千歳NEWS 事業から撤退し、他のFAZ 関連事業を手がけることもなくなった北海道エアフロント開発を任意整理することに決定した。債務超過になり、2店舗の家賃収入だけでは人件費や事務費なども賄えない状況で、新たな事業展開も見込めない状況では、当然の結論であろう。同社の最後の決算になった1998年度の経常損益は1800万円の赤字。債務は銀行借入れの2億700万円に加えて、北海道空港が肩代わりしている建物改修費12億200万円の合計14億900万円にのぼる。同年3月に自己破産が認められ、北海道エアフロント開発は倒産した。旧千歳旅客ターミナルを所有する北海道空港は、レンタカー会社の営業が入居している同ビルを2001年4億円をかけて解体し、敷地を更地にして国へ返上するとしている。

3.考察
@ 商業施設としての千歳NEWS の経営分析
 商業施設が競争優位を構築できるかどうかは、立地や雰囲気といった商業施設自体の魅力と、各テナントが提供する商品やサービスの魅力によって決まる。筆者が調査に行った時点では(1999年6月)、既に千歳NEWSのテナントはほとんど撤退した後で、レンタカー会社が営業所を開いている状態であった。そのため、千歳NEWS内の状況に関しては分からないので、立地に関してから千歳NEWSの経営に関して考えてみたい。千歳NEWSは千歳市の中心部から車で5分程度のJR南千歳駅からすぐの場所にあるが、南千歳駅周辺は進出企業があまりない工業団地と空港滑走路しかなく、人の流れはあまりない。千歳NEWSを利用する客は、36号線を利用してやってくるマイカー族と見られる。千歳市方面から道々で新千歳空港へ向かってくると右手に千歳NEWSが見えるが、右折で道路を横断して千歳NEWSの駐車場へは入れない。一度、新千歳空港を5分間ほどかけて経由して、やっと千歳NEWSへ入ってこられる。こうしたアクセスの悪さは、顧客の不満を招くものであろう。ただし、多少アクセスが悪くても、千歳NEWSに魅力があれば、顧客はやって来る。周辺に何もない立地とアクセスの悪さは、ふらっと立ち寄ってみられる気軽さを失わせていたと見られる。
 千歳NEWSは輸入品の促進を図る、日本の外交政策の一環としてのFAZ構想に乗った商業施設である。そのため、輸入業者や輸入品小売販売業者と、レンタカー営業所など新千歳空港ターミナルの空港機能を補完するテナントに限られていた。そのため、商業施設で販売される商品は買い回り品が中心となる。買い回り品の商圏は一般的に広いとされるが、千歳市及び近隣の市町村だけでは輸入品の十分な市場を確保するのは、人口上多少厳しいといえる。180万人の人口を抱える札幌市の顧客を取り込むことも当然考慮されていたであろうが、千歳NEWS が開業した時期に円高が進行して安価な輸入品が販売され、札幌市内にはいくつもの輸入品を扱うショッピングセンターや専門店が店を構え、激しい競争を繰り広げていた。そうした集客競争が激しい状況で、物販スペースが1,800平方メートルと小さく、1階に公的スペースと多目的ホールが多くを占めるような商業施設が果たして顧客にとって魅力的であったのか疑問である。そのため、空港に近い立地のイメージを活かした、例えば輸入ブランド品のアウトレットなどのテナント集積を作るなどの工夫ができなかったのであろうか。旧旅客ターミナルを利用して、第三セクターがFAZ 構想の枠組みの中で事業活動するため、空港機能の補完、地域振興、輸入促進の3条件が経済的支援を引き出す上での前提になったが、第三セクターが運営する施設故の制約が商業施設としての千歳NEWS の競争優位性を阻害していたと見られる。例えば、千歳NEWS に対して輸入促進と空港機能の補完という公的目的を並列的にもたせることで、施設コンセプトが中途半端になったことは否めない。こうした制約によるデメリットは事前のフィジビリティー・スタディーで十分予測できるにもかかわらず、1995年3月に開業した商業施設が1998年3月に閉鎖され、翌年3月に破産するというのは、まずFAZなどの地域振興計画ありきで、千歳NEWS の採算性などのミクロの計画を緻密に計算していなかった疑いがある。

A 第三セクターの経営と地域開発の考察
 通常、企業は事業環境に柔軟に適応することが求められ、一方で自らにとって好ましい事業環境を創造することも行わなければならない。そこで、適切な経営戦略を立案し、実行するということが必要となるが、戦略立案の基盤となる諸前提から受ける制約が少ないほど、戦略の実行に当たっての自由度が高いほど、企業の成功する可能性は高い。第三セクターは、その成り立ち故に経営の自由度が低い組織で、柔軟な環境適応と好ましい環境の創造に関して十分な成果が上げられないことが多い。加えて、官と民という存立目的や組織の特性の異なるステークホルダーによる合弁という組織形態が、経営に対して制約と余分なコストを課すことになる。北海道エアフロント開発は、千歳地域に輸入促進施設を作るという通産省自体の計画に端を発しているが、旧千歳空港旅客ターミナルの再開発という目的が運輸省の意向によって加えられたことで、既存の施設を利用するという制約が加えられてしまった。既存の施設を活用するというのは、施設建設という初期投資をしなくてすむメリットがある反面、立地や施設自体の魅力に乏しいとメリットをデメリットが上回ってしまうことがあり得る。千歳NEWS 開業に当たってテナントの誘致が計画通り進まず開業時期が遅れたのは、旧旅客ターミナルを活用するというデメリットがテナント候補の民間企業に認識されていたからであろう。また、施設内の改修で14億円もかかっていれば、既存施設を使い回すことで初期投資が少なくてすむというメリットも減じられている。旧千歳空港旅客ターミナルを活用するメリットは小さく、デメリットの方が大きいのに計画が推進されたのは、北海道エアフロント開発で重要なステークホルダーである通産省と運輸省の意向に影響されたからであろう。
 また、北海道エアフロント開発は多くの株主が出資をしており、歴代の社長は北海道の副知事が就任しており、北海道主導が明確にされていたが、実務は民間企業や団体から出向してきた人々が行っていた。そのあたりで、北海道エアフロント開発の経営陣は、外部環境に対する適応よりも、まず組織内部の調整に力を殺がれざるを得なかったかもしれない。第三セクターという官と民という合弁形態ゆえに、北海道エアフロント開発が民間企業としての採算性を十分に確保するのか、それとも北海道の外郭団体として公的支援によって公共目的推進を重視するのか、そのあたりの優先順位が経営の意思決定において徹底されていなかったように思われる。前者ならば第三セクターとしての存在意義が問われたとしても、公的支援をあまりせずに産業振興につながる。後者であれば、公的支援をしてもそれ以上に地域経済へ恩恵があれば、地域政策としては成功である。北海道エアフロント開発は組織の使命と価値基準を明確にし、それで経営を行っていれば、公的資金と民間資金を投じて、ほとんど何も成果が上げられないという最悪の結果が避けられたかもしれない。
 千歳地域は日本でもっとも利用客の多い羽田−新千歳間の幹線路線を持つ新千歳空港があり、苫小牧港や北海道の中心都市である札幌市からも近いという立地上の優位性を持つ。しかしながら、千歳地域はそうした立地の優位性を十分活かしているとはいえず、そのため、北海道および千歳市をはじめとする近隣地方自治体は大型プロジェクトで地域振興を図ろうとした。通産省が「北海道エアロポリス(空港都市)構想」を立案し、千歳地域の振興に対して国家レベルで支援をすることが打ち出された。千歳地域におけるFAZ およびオフィス・アルカディア(新産業文化業務拠点)計画(以下OA )も、北海道エアロポリス構想に端を発している。FAZ もOA も共に通産省が中心になって推進する計画であるが、根拠法が異なるため内部での所轄部署も異なる。そのため、別々のルートから千歳地域の産業振興を行うための資金を引き出せるメリットがあるものの、反面、両計画の重複による無駄や調整に時間をかけなくてなならない。同一地域における複数の大型プロジェクトの同時進行は、経済的支援というインプットを地域の税収や就業者の増加といったアウトプットに結びつける時に有効性を減じるコストが生じる可能性が高い。これは縦割り行政の弊害といって良いだろう。また、FAZ計画は北海道の「時のアセスメント」によって事業中止に追い込まれたが、FAZ計画自体にも問題があったのかもしれない。輸入促進のために輸入された最終消費財を販売するというアイディアは良くわかるが、素材を輸入し北海道で加工するという発想はグローバル経済下における各国の戦略の変化からすれば適正ではなかったかもしれない。
 地域社会の振興は、地域の事情が分かる各地方自治体が責任を持って行わなければならないが、現在の財政構造は地方自治体の投資の自由度が低く、政府や中央官庁の支援によって実行できるようになる。そのため、中央官庁の意向に従うことで、そこから経済的支援を引き出し、制約の下で地域振興を行おうとする。地域振興という事業自体もリスクが伴うのに、経済的支援を受けることを引き替えにした制約が事業リスクへの柔軟な対応を防げてしまう。また、議会や地域社会の企業が地域振興に対して制約を与えてしまい、地方自治体の自由度を狭めていることも否定できないであろう。そして、地方自治体も地域振興の事業に対するリスクへの対応が、しっかりできていないところにも大きな問題がある。このような構造的問題が多く存在する状況で、経営が他の組織形態と比較して複雑性を増す組織形態である第三セクターが十分な組織成果を上げるのは非常に難しいと言わざるを得ない。北海道エアフロント開発の経営破綻も、その例外とはなり得なかったといえよう。(1999年11月調査)